ブブ美エクスペリエンス

ブブ美が体験したことや気になって調べたこと、実際に試した結果(人体実験)を発表しているブログ。ネットで見つけたレシピを作った感想なども書いてます。

黒と黄色より白

人生において、白塗りの集団と歩く、それも屋外を練り歩いたことがある人は何人いるだろう。

 

11月23日、阪神オリックスの優勝パレードに沸く人々を背に、私は京阪電車に揺られてひらかたパークを目指していた。

恋人に会いに行くためだ。でも、デートじゃない。

 

数日前、恋人からひらかたパークでイベントがあり、カンボジアの支援ブースを出展すること聞かされた。

恋人はカンボジア支援の活動をしていて、11月の初めにも向こうへ行っており、現地の教育省ともやり取りを行っている。

そこで固まった企画の支援を呼びかけるブースをひらパーで出すそうだ。

せっかくの休日に一緒に過ごせないのかと少し気分が下がりつつも、この人にはこの人の活動があるし、それを制限するのは嫌だ。それに私がもしこの人の立場だったら、それを笑顔で応援して欲しいと思う。

なので「頑張ってね」と言いかけた所、「前に話した白塗りのビジュアル系バンドでやる」と恋人が言った。

 

―白塗りのビジュアル系バンド

これは1度、恋人とその近しい仲間たちとで"演奏したら即解散 究極のビジュアル系バンド"というコンセプトで色々と活動しようと立ち上げた、メンバー8人全員が顔面白塗りのバンドのことである。

 

春に結成をしたが、夏場に白塗りは熱いし、崩れるということでビジュアル写真や映像を1度撮ったきり、涼しくなるまで活動を休止していた。

 

 

件の撮影は私と付き合う前のことであったため、その時の様子は恋人からの伝聞でしか知らないが、次々と産み出されていく白塗りの男たちを見て、メンバーのお子さん(1歳)が恐怖で泣き出したり(お父さんは撮影参加を断念したらしい)、撮影を見ていた地元の高校生が「バンド名を教えてください。Spotifyで聴きます!」と嬉しそうに話しかけてきたりと初っ端から男子大学生のデカ盛りランチ並みの情報量の多さ。

ちなみに演奏したら即解散なので、オリジナル曲どころか演奏している音源すら無い。

 

過去にその話をお腹を抱えて聞いていたので、かねてより1度見てみたいと思っていた。

と、いうことは今がそのチャンスなのでは?と恋人にそのイベントを見に行ってもいいかお伺いをたてた。

 

恋人は二つ返事で了承し、カメラマンが足りていないことを告げられ、それではとマネージャー兼カメラマンで参加することになった。

 

 

そして当日、優勝パレードで賑わう人混みをかき分け、電車に乗り込んだ。

電車に揺られながら、仕事のお手伝いにとはいえ、恋人に会えることに胸を高鳴らせながら早く着かないか、探偵はBARにいる大泉洋のように「急いでくれ!!」と窓を叩きたい衝動に駆られた。

 

 

最寄りの枚方公園駅からは殆ど一本道で、走りたい衝動を胸に秘めつつ、あくまで冷静かつスマートに歩くことを考えた。

 

ひらパーへ向かう間、脳内ではチャットモンチーの『風吹けば恋』が流れていて、自分も中々の乙女だなぁと破顔した。

 

さて、無事に入口につき、関係者パスを受け取るために恋人へ着いた旨をメッセージを送り柵越しに恋人の到着をいまか今かと待ちわびた。

 

しかし、そこで冷静になる。

あの人白塗りやん、と。

しかもただの白塗りではない。海賊のコスプレをした白塗り髭ロン毛だ。

 

決して白塗りであること忘れていたわけではない。

むしろそれを面白がって来ている。

しかし、白塗りの集団と一緒に、何も仮装せずに歩くことを考えていなかった。

彼らは白塗りだから注目は浴びるけれど、素顔はわからない。

しかし、私は普段通りの格好でここに来てしまった。

 

途端に素顔対策を講じる。

今あるもので、自然に顔を隠せるものは…ない。

駄目だ、浮かばない。

ああ、まだ来るな。

なにが「風!風!背中を押してよ」だ。

押すな。顔面の白塗りを吹き飛ばせ。

 

自宅にあるサングラスを恋しく思っていると、しきりに二度見で振り返える人や、おねしょをした時のように顔をくしゃくしゃにした子供が目についた。

 

まさかと思った瞬間、白塗りの海賊が目に入った。

しかし、恋をする気持ちって凄いですね。

恋人が白塗りで現れても、姿を見かけるとときめいちゃうのだから。

科学実験の成れの果てで異形へ変容した恋人と再会した人の気持ちを味わえた。

こんな気持ち味わえるのはハリウッド俳優しかいないだろう。

 

パスを受け取り、バンドメンバーやブースの主催の方々にも挨拶を行う。

幸い、主催の方々は白塗りではなく、ごく普通の格好をされていた。

優しい方々だったが、そもそもこの人たちが白塗りバンドにオファーをかけたのだ。

穏やかな仏様のような顔の下にどんな狂気が孕んでいるかワクワクする。

 

 

ここでバンドについて紹介したい。

 

A Pointless Story


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地元泉大津を中心に、精力的に活動する"演奏したら即解散 究極のビジュアル系バンド"である。

 

リーダーのタイガー・シャーク氏に結成の目的を聞いてみたところ、『「音楽に対する新しいアプローチ」と演奏以外で音楽活動をどこまでできるかチャレンジする、という2つの目的から成ります。』とのこと。

ちなみにA Pointless Storyとは"薄っぺらい話"という意味である。

全然薄っぺらくないじゃないか。

 

 

そして、今回参加したメンバーはこの4人。

 


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タイガー・シャーク

バンドのリーダー。

唯一、小学生からチェキのご指名があった。

 

 


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ミナミ・クミノキ

着ている衣装はだんじりのもの。

 

持っているギターは弾けない。

 

 


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TOSHI

AKIRAJr.

一番腰が低く、お辞儀がガラケー

子供から度々剣を奪われる。

 

 


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ゲリラ・ガーディアンズ

最年少。お肌ツルツル。

かわいい。

サングラスを取るとつぶらな瞳。

かわいい。

 

 

 

ブースの宣伝がてら園内を練り歩いたのだが、すれ違う人々の視線を奪いっぱなしである。

興味津々と見つめてくる人もいれば、恐怖に顔を引き攣らせる子どもがいたりと、まるで人里に降りてきたモンスターである。

 

楽しそうにメリーゴーランドに乗っていた、外国人の子どもたちの笑顔を一目で奪い去り、目を丸くさせる破壊力。

海外のお友達みんな、にほんでは昔から舞妓さんとかバカ殿様とか、白塗りの文化があるんだよ。

 

しかし、どんなに怯えられても彼らのファンサービスは素晴らしかった。

興味深そうに見つめてくる子供には手を振り、話しかけてくる子供には笑顔で返事する。まるでディズニーのパレードのよう。

 

お子さんを連れたお母様から「悪いことをするとでてきますよね!?」と話し掛けられた際も、「いい子にしていないと出てくるよ〜!」とキチンと手を振っていた。子どものしつけまでできるバンド、それがA Pointless Story。

略してポイストでこざいます。

 

 

もちろん、怯えられるだけではない。

「絶叫の滝 バッシュ」という乗り物に乗った際、こちらのアトラクションは30分ほど並んだのだが、順番待ちの間に同じように並んでいる小学生たちととても仲良くなっていた。

出発の際に「行ってくるなー!」「がんばれー!」なんて、なんとも心温まるやりとりをしていた。

クライマックスで滝を急降下で滑り落ちる時なんて、「来たで!!来たで!!」とお子さんを呼ぶお母さんもいた。

子どもだけでなく、主婦も虜にするバンド、それがA Pointless Story。

 

誕生日の女の子と出会ったときには全員全力でお祝いし、記念撮影をしていた。

楽しい誕生日を演出するバンド、それがA Pointless Story。

 

 

演奏しないバンド、A Pointless Story。

演奏せずにどれだけ音楽活動ができるのか、彼らの今後に目が離せない。

 

インスタ / TikTok

 

 

カンボジアの朝、元町の朝

旅行というものに興味がなかった。
そもそも住んでいる所が観光地だし、電車にすこし揺られれば大阪や京都に辿り着ける。
雑誌の観光地の紹介を見て行ってみたい、と思うことはあっても、思うだけで行動に移すことはあまりなかった。
なので、旅行に行く際は友人や家族などの周囲の人間に引っ張られて行くことが殆どで、加えて高所恐怖症のため、基本的には陸路で行ける場所を選んでいた。
唯一海外へ行ったのは修学旅行の台湾で、行き帰りの飛行機は恐怖のあまり、友人の手首に痣ができるほど握ってしまったことがある。
なので、海外なんて以ての外と思っていた。

しかし、最近は海外に行きたいと思っている。
海外、カンボジアに行ってみたい。


今月の頭まで犬がカンボジアに行っていた。
仕事の関係だそうで、滞在中は現地の写真や動画を沢山送ってくれた。
そこに写っている穏やかな空気、現地の人の笑顔。
単純に「いいな」と思った。
ピリついている空気が写真や映像から伝わってこないのだ。
全身が暖かい毛布に包まれているような空気感。
味わってみたい。

あと、カンボジアは朝日がとても綺麗らしい。
何気なく読み返していた片桐はいりさんのエッセイでカンボジアの朝日について書いてある部分があった。
好きな本で、何度も読み返していたはずなのだが、その時は特に気にも留めず、話のメインであるヘルシンキの食事、ベリーたっぷりの料理やどこにでも現れるじゃがいも、苦労して手に入れたニラの話など、食べ物の話題に心を膨らませていた。
しかし、改めて読んでみると、キラキラと輝くカンボジアの朝日を顔いっぱいに受けてみたくなった。

カンボジアに行ってみたい。
犬の影響を受けたのかと言われると、なんとなく違う気がする。
影響を受ける、というよりは考えが組み替えられて、以前は目につかなかったものが、視界に入るようになってきたというのが私の感覚だ。
休日、日が昇り切る前の朝日を浴びながら散歩をするのは好きだし、穏やかに過ごすのは言わずもがなだ。
犬のカンボジアのお土産話を聞いて、行きたい気持ちがさらに強まったのも事実だが。


ところでカンボジアと日本には時差が2時間ある。
朝の7時頃に件のエッセイのカンボジアについて書かれている所を読むと、ちょうど今頃、こんな朝日がカンボジアを照らし始めているのかと、思いを馳せてちょっぴり旅行に行った気分に浸る。
ほんの数ヶ月まで興味がなかった国の朝日を熱望する自分に少し笑ってしまう。
犬が向こうに行っている間、会いたくなった夜には早めに起きてこの儀式を行ったし、今でも心がすこし疲れた日にもしている。


カンボジアの朝日と空気を纏いたい。いつか絶対。
そう思いながら、今日も職場のビルや家のベランダから階下を見下ろしている。
飛行機に乗るため、高所恐怖症を克服する訓練だ。

 

 

 

住んでいる街について知りたい

 全知全能の神になりたいとは思わないけど、せめて自分の知っている街については知っておきたいと思っている。だから時間を見つけては散歩に出かけて、時間と足の裏がゆるす限り徒歩で移動する。気ままにワクワクする方へ足を向けていると、自分だけのお気に入りのスポットを見つけることが出来るのだ。それはお店だったり、公園だったり、神社だったりと様々で、見つけた場所は、お気に入りの服ばかりが犇めき合うクローゼットのように、記憶にぶら下げておく。そうして服を着るようにして、お気に入りの場所を目的地にして新たな散歩へと向かうのだ。

 

 私にとって行き先は服と同じなので、その雰囲気や景色を他人に見せたいという欲が湧いてくる。犬にも今のように気軽に触れることが出来る前からお気に入りの場所を紹介していたし、それは関係が変わった今でも同じだ。今の関係になる前に、お気に入りの神社を案内した帰り道に、近くに神道や仏教、カトリック等とは異なった、謎の宗教色が強い建物があることを思い出して伝えた。それでは見に行ってみようと前を通ったところ、その団体が主催する青空市の告知を犬が見つけた。一見すると、普通の地域のイベントの案内のようだが、「有機野菜」「卵」「手作りお菓子」の中に「御神水」というキーワードを見つけて、私たちははしゃいだ。うっすらと漂っていた「らしさ」が確信へと変わった。

 

犬はそれを興味深そうに写真に納め、後日、そのお誘いを受けることになる。因みにこれが、犬と深い関係になって初めて二人で出かけた先になる。断わっておくが、誘われたのも、了承したのもそういう仲になる前だ。でも、付き合って初めてのデートが「謎の宗教団体の青空市」というのはエピソードとして非常に美味しいので、大いに利用している。犬の知り合いを紹介してもらった時も、これで笑いをとれた。

 

 さて、イベントに向かうには正装をしなければならない。中堅社会人なのでTPOをわきまえた服装をしなければ。なので、ドラマ「TRICK」の山田のような地味な服装で行くことを犬に伝えた。犬からは上田教授のようなチノパンでカッターシャツにベストを着るという返答の後に、教授の著書『どんと来い、超常現象』を購入したと連絡があった。その報告を読んで、爆笑するのと同時に。教授の著書まで購入することを思いつかなかったことに唇を噛んだ。

 

 TRICKのドラマや劇場版、スピンオフの矢部警部補まで見て、準備を整えて当日を迎えた。現場に到着すると、にこやかに迎えてくれるお店の方々。私の知り合いの中で最も社交性が高い人物である犬は、宗教団体の相手でも物怖じすること無く話しをしている。私も、いつ勧誘を受けるのか緊張しながらも、努めてそれを隠すように努力し、向こうさんの返事にうんうんと頷いた。社交性の塊である犬は相手にドンドン質問を投げる。貰った回答を踏まえてさらに質問を投げるので、犬に対する向こうの好感度が質問をするたびに上がっているのがみてとれた。売られている野菜の事、どれぐらいの頻度で開催されているのかなど聞き出し、無理矢理売りつけられたり、一括購入させられたりしないものなのか、と緊張を少し解いたところ、「市販のものには良くないものが入っているから」という如何にもなキーワードが発せられ、途端に私の精神は現場復帰した。しかし、以降はそれらしいワードがでることは無く、ご神体にもお参りを行った。日本ではメジャーではない参拝方法だったが、後から調べてみると、海外ではメジャーなもので、独自に進化したものではないようだった。

 

 参拝を終えて帰ろうとしたところ、犬が「チラシに書いてある御神水はどれですか?」と質問をした。あまりに唐突だったため、「なにを言っている」と驚愕の表情を浮かべそうになったが、咄嗟に「私も気になる」と興味深々のような表情を浮かべることができた。たくさんのドラマや映画を見てきた成果がここででた。

 相手方は丁寧に「こちらで売っています」と売り場へ案内してくれた。机の上には3種類のペットボトルが並んでおり、一見すると何が違うのかわからない。犬もそれは同じで「これって何が違うんですか?」と素直に聞いた。躊躇するような質問も平気でする犬の肝が欲しい。

すると売り場の方は真ん中に置かれたものを指さし、「これは陽の気がたくさん詰まっています」と答え、犬も「じゃあ、その陽の気が沢山詰まっているものをください」と言って購入して帰った。

神水は犬の友人にプレゼントされ、後日友人による食レポ動画が送られてきた。味と効果に関しては、ここでは触れないでおく。

 

さて、初デートが中々トリッキーな場所だったが、実は宗教団体以外の場所にも行った。

9月の頭、まだまだ夏の気配が背中にくっついている日中だったが、夕方には秋の訪れを感じる日だった。

青い空に浮かぶ雲がほんのりピンク色に薄付く中、音楽を聴きながら飲んだアイスコーヒーの味と、秋風を頬に受けながら微睡んだ時間も私は忘れないだろう。

宗教団体のような刺激的な体験も、音楽を聴きながら外でのんびりと過ごす時間、どちらもこれから沢山、犬と体験できたら良いなと思う。

 


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犬を飼う

 私の元に犬がやってくるようになった。私よりも大きな体躯の長毛の大型犬である。人懐っこく、私の知る限り、誰とでも仲良くなっている。

所用があって、私が通っている整骨院に一緒に行ったことがあったのだが、10分ほど目を離した間にそこの院長と仲良くなって、“お土産”を貰っていた。初めて入った喫茶店の店主とも、いつの間にか親しげに話し、「また、おいで」とお見送りをされていた。

 

 ここ数年、私自身の根底は「孤独な狼」だと思っていて、特に自分のセクシャリティを理解してからはその思考が加速していた。表面上は仲良く接しているが、一定のラインまで踏み込まれると逃げ出す。また、格好をつけたがるので、厚紙を切っては体に貼り付けていき、重さに耐えきれなくなって厚紙をつけたまま、その人の前から姿を消すということを繰り返していた。

 犬と出会った時もそうであって、「一定の距離を保って、踏み込まれたら交流を断とう」と考えていた。犬の話はとても面白いし、今まで出会って来た人種と真逆だから、自分の人生の刺激になるのではないか、と完全に自分本位で犬との交流を行うことを決めた。

 いざ交流してみると、やはり犬の話や行動は面白く、喉が枯れるほど声を上げて笑ってしまう。犬と会う時、大好きな作家の新刊を読むような気分になる。また、犬はよく私に“戦利品”を送信してくれるのだが、その一つ一つが面白くてわくわくする。犬とのメッセージ欄はまるでカラフルな琥珀糖の詰め合わせのようである。

 そうして交流を重ねるうちに、ある時、犬の毛を撫でたいという気持ちが沸いた。わしゃわしゃと撫でまわして思いっきり吸い込んでみたい、猫吸いならぬ、犬吸いだ。そこから犬の事が妙に愛おしくなって、ずっと犬と交流できればいいのに、と鋏を捨てるに至ったのである。

 

 さて、先日、私の家についに犬がやってきた。念願叶って、犬の毛を撫でまわすことが出来て、とても満足したし、私が作った料理を美味しいと言って食べる姿は愛らしく、思わず私のおかずを分けようか、と言いそうになった。(食べ差しは流石に失礼かと思って我慢した。)

 犬は義理堅く、お土産を持ってやってきてくれたのだが、持参したものは「歯が折れそうなぐらい硬いお煎餅」と「忍者塩」、「海洋プラスチックのタイル」だった。K点を越えるどころか、そのまま上空へ飛んでいくお土産のチョイス。我が家の壁は薄いので、お腹の底から笑い声をあげることが出来なかったのが心残りである。

 今は、海洋プラスチックの上に私の推しのアクリルスタンドと、それを取り囲むように置いた忍者塩のオブジェ(作・犬)を眺めながらこの原稿を書いている。文章に詰まると、それを眺めて、つい口元を綻ばせる。

 

 犬は私の事を「猫」だと言って愛でてくれている。大きな体躯に包まれると安心し、「孤独な狼」は消え失せる。不思議と、犬の前では厚紙を貼りつける必要も気持ちも湧いてこない。

 私の本質は何か、わからなくなってしまったが、今は目いっぱい犬を愛でようと思う。仮にも文章を生業として生きていこうと思っているのだから、犬を見習って、私も素直に言葉をかけよう。直接、言葉として発するのは恥ずかしいから、まずは文字から。

孤独のあかつき

孤独のあかつき

 

 

 

お店で食べられないものを作るのが再現レシピの醍醐味だと思うのですよ

夜食の美味しさは異常。

みなさんは深夜に何を食べるのが、美味しいと思いますか?

ポテチ?カップラーメン?ははは、夜食ビギナーですね。

今の時期なら絶対スイカ。今、法律で定めました。日本国憲法の104条辺りに書いています。ソースは民明書房

24時くらいに薄い三角形に切ったものを片手にベランダに出て、まばらにつくマンションの光を眺めながら、お食べになってくださいまし。キンキンに冷えているとなお良しでございます。

一口齧ると、ガチでとぶ、マジで美味しい、ハイ、名店の味グランプリ。

いや、味自体は家の中で食べるのと変わらないのですが、少し日中の暑さを残した街の空気に、冷えたスイカが丁度よくて美味しさもひとしおのように感じられます。

 

微かに感じるコンクリートの匂いを吸いながら、街頭に照らされた樹やところどころに点灯しているマンションの明かりを見ていると、自分だけが世界に残されているようになるのが堪らなく楽しくて寂しいのです。

そういえば、昔、父も夏になるとベランダでビールを呑んでいたな。書いていて思い出した。

 

私が夜食を食べる時は「よーし、今日は遅くまで起きちゃうぞ~」なんて腕まくりなのですが、夜食を食べると途端に血糖値爆上がりで眠たくなってしまい、そのまま寝てしまうこともしばしば。

しかし、翌朝後悔するんですね。

朝食はパン・お米、どちらも好きなのですが、どちらも一口食べた瞬間、しんどい。

美味しいとか、まずいとかではなくしんどい。

例えるならば、大して仲良くない人から飲み会に誘われた時のような、めんどくせぇ、しんどいというような感じ。

 

「なぜなぜなぁに」で生きているので調べてみますと、寝る前に食事を摂ると睡眠中も消化活動をすることになるので、体が十分休まらない、胃が休まらないとのこと。

食事は眠る3~4時間前までに済ませるのがよいらしい。ポケモンスリープに書いてありました。

 

なので、最近は深夜に食べることは控えていて、その代わりに食べるものの種類でヤンチャをしています。

ママのおっぱいをちゅぱちゅぱ吸っている乳くせぇ子供の頃は、家系ラーメンや一人焼肉に馳せ参じていたのですが、ブブ美は、もう立派な一人前の大人。最近は専ら、漫画に出てきたものを作って食べています。

ということで、今回は実際に作ってみたものを紹介していきたいと思います。

 

 

 

イタリアン・ビーフ  ― 鍋に弾丸を受けながら

 

鍋に弾丸を受けながら 1 (カドカワデジタルコミックス)

私の中でアツい漫画の一つです。

表紙を見て、「ハイハイ、美少女がちょっと下品に食事する漫画でしょ。」と思ったそこの君、私の話を一旦聞いてほしい。

この漫画は料理を見せたいのか、美少女を見せたいのかわからない漫画とは違い、食べながら、無駄によだれを垂らさないし、意味もなく顔を赤らめながら恍惚の表情を浮かべない。ただシンプルに文字で美味しさを表現してくれる。表情はほんの少しのスパイスだ。四の五の言わずにとっとと読め。読んでくれ。

私が心を掴まれたのが「治安の悪い場所の料理は美味い」「日本みたいな安全な場所は 70点から90点のものがどこでも食べられるが、危険なエリアの料理は20点が5万点」という魅惑的なセリフ。タトゥーとして耳の後ろに彫りたい。

 

自分が作る料理以外、大抵のものは美味しいと食す私ですが、5万点の食事なんてそれこそ人生観が変わってしまいそう。

味の想像はつかないですが、その未知の食べ物を口に入れて、咀嚼した瞬間に、きっと首の後ろを伝って、ビリビリと電気信号が駆け巡るのだろう。

想像しただけで、ゾクゾクするのですが、この漫画に出てくる料理はおいそれと簡単に手に入れることが出来ないものばかり。

例えば、アマゾナスの緑色のオレンジでつくるカクテルのような100%オレンジジュースや『カードミステリー』の「プルプルソーダ」を彷彿させる中東の砂糖菓子・ハルヴァなど日本では到底手に入れることが出来ない。

 

そんな中で、なんとか再現できそうなのがこの「イタリアン・ビーフ」です。

イタリアン・ビーフの説明は漫画に詳しく記載されているので、私がどんなに高説を垂れようとも、それは所詮、漫画の焼き直しですので、ここでは割愛します。いいからとにかく漫画を読んでくれ!!!!因みに2話目だ!!読めるだろ、読め!!!

 

真似っこするのにあたり、分量の記載が漫画内になかったので、私の感覚でいきました。私を信じて愛せるのは私だけ。自分を愛せるような自分を作りなさい。

「イタリアン・ビーフ」で調べると、様々なレシピがヒットするのですが、今回は「鍋に弾丸を受けながら」に出てきたイタリアン・ビーフを食べたい、に重きを置いていますので、材料は漫画の記載にあるものしか使用しておりません。

 

材料

・パン(フランスパン等の硬いパン)

・牛肉(しゃぶしゃぶ用)

・塩コショウ ☆

・パプリカパウダー ☆

オレガノ

・ガーリックパウダー ☆

・ビネガー(私はバルサミコ酢を使いました)

・醤油(隠し味)

・イタリア人のような美食への探求心

・シカゴ生まれのような豪快な思い切りの良さ

 

まずはパンを切ってトーストします。焼いてできる限りの水分を飛ばしておきます。でも、焦がしてはだめ。難しいね。

過去にコッペパンで作ったこともあるのですが、スープをあまり吸わなかったので、絶対にフランスパンが良いです。漫画もフランスパンを推奨しています。

最後に鍋にボトンとヤクザがコンクリ詰めにして海に沈めるように、パンもスープに沈めますので、鍋に入る大きさにカットしておいてください。

先端を後ろをカットしておくと、鍋に沈めた時にスープが吸いやすくなります。

背中に切り込みを入れておいてください。そこが肉の着地点です。

 

お肉をミルフィーユのように重ねていきます。

スパイスと牛肉を交互に重ねてサンドイッチを作るような感じで、間を挟むように☆のスパイス類を振りかけていきます。

味付けはこの後に使う、ビネガーと隠し味の醤油を除いて、このスパイス類のみなので、イタリア人のような美食への探求心を持って薄味でもなくば、かけ過ぎで肉の味を殺さないような量に注意しながら振りかけてください。

私は、オレガノをかけると肉の野性味が増して美味しく感じるので、オレガノたっぷりで作っています。

 

 

重ねたまま、油も何も敷いていない鍋に入れて、弱火でビネガー少し、醤油をひと垂らしながら焼いてください。

肉から出る蒸気でさえも一滴たりとも逃さない、すべて食い尽くしてやると強欲な気持ちでお肉を焼いてください。私もあなたも、お肉の前では貪欲な一匹の獣です。

 

焦げ目がついたら、なべ底に薄く張るぐらいの水を入れて蓋をして極弱火に。

中まで火が通ってなくて大丈夫です。というか、この工程では寧ろ火を通してはならんのです。

写真よりもう少し水を減らした方が、さらに美味しくなると思います。

メインディッシュのスープを作るため、如何にお肉にダメージを与えずに肉汁を出すかという感じです。絶対に沸騰させてはいけません。

 

先ほど入れた水が濁り、お肉の油が浮かんできたら、ミルフィーユを崩壊させてしゃぶしゃぶのように、お肉を鍋の中で泳がせてください。ここでお肉に火を通します。

 

お肉に全体に火が通ったら火を消して、先ほどトーストしておいたパンにお肉を挟んでいきます。

 

もう、パンッパンのぎっちぎちに。これでもかというぐらいに。

途中、正気に返って「うわ…」と声を漏らしたのですが、正気に往復ビンタを噛まして追い払いました。悪魔よ、降りてこい。私はここにいるぞ。

今の私はシカゴ生まれなので、何事も豪快にだぜ、ブラザー!

 

そして、お肉を挟んだパンを鍋へダイブ!!!

できるだけパンにスープを吸わせてください。

お肉が零れてていますが、最後に挟みなおせばいいんです。

 

兎に角最優先は、パンにスープを染み込ませること。その為には、多少の悪に手を染めてもいとわないです。

ということで、スプーンでスープを掬って、パンに掛けてあげてください。これは沐浴です。チクショウ、お母さんに沐浴のやり方習っておけばよかった。

 

パン全体がスープでベショベショになったらOK。

零れたお肉を挟みなおして、お皿にのせてください。

 

完成

 

 

一口食べると目が覚める。衝撃がすごいのです。

眠っているときに、誤って照明のリモコンをONにしたときにガツンと脳にくるダメージのような感じ。スープ!!肉!!うまし!!!

 

実は作っている最中、味見でお肉を食べてみたのですが、そこまで美味しく感じられなくて、「これは失敗しちゃったかなー」なんて考えていましたが、スープに浸した完成形を食べるとと最高!!!なにこれ、星100万個。マチャアキも全裸でヒップホップを踊るレベル。

 

語彙力が無いのが悔しいほど、美味しいのです。

 

何度か作って気付いたことは、このサンドイッチのメインは肉だけでなくスープ、と肉の二つであるということ。

肉だけでは成立しないのです。かといってスープだけでは物足りない。

イタリアン・ビーフは素材の美味しさを余すことなく食べる料理だと思いました。

 

今回作ったイタリアン・ビーフ以外にも、この漫画には食べてみたい食べ物がたくさんあります。

 

私が食べてみたいものは、ぶっちぎりで「ひくほど体にイイ」はちみつです。

漫画の中では、正体が開かされていないのですが、色々調べてみると、有識者の方が、恐らくこれであるだろう、と記載しているのですが、日本で買えそうにない。

それが含まれているサプリもあるようなのですが、私ァ、混ぜモンなしのが食べてェんだ。

 

紹介されている料理も美味しそうなのですが、私はこの漫画の表現方法が上手い!と思ています。漫画プレゼンタイムです。

ここからは料理と関係なくなるのですが。。。

この漫画にはとある理由により画面には美少女しか出てきません。「基本的にノンフィクション」、と明言され、登場する人物、土地、料理も実在すると記載されています。

男性も美少女化しているのですが、その理由が今までにないので、ぜひ読んで確かめてほしい。

というか、サイトで一部無料公開されているのと、ボイスコミック化されているので見てほしい。

とにかく、全ての人類が美少女化されているので、治安の悪いところにいるガラの悪い男たちも全員,まんがタイムきららに出てくるような可愛らしい女の子。

そのおかげで、食事シーンを読んでいるときも、「美味しそうだけど、でもここって治安悪いんだよなぁ」なんてネガティブな思考のノイズが無くなり、純粋に食事の美味しさを想像できる。簡単に行けない危険地域だけど。

その食事シーンも全く下品じゃなく、言葉と表情で料理の美味しさを伝えようとする気概が大好きなのです。

 

 

 

 

 

この記事の校正をしているのは、夜中なんですよね。。ああ、悪魔が私に囁いてくる。

「深夜に食べるイタリアン・ビーフは飛ぶぞ」と。ああ、悪魔よ立ち去れ。